健康コラム

耳が遠い高齢者との接し方と快適なコミュニケーションの取り方

耳が遠い高齢者がとまどう姿や会話に入れない様子を目にすると、「何とかしてあげたい」と思いますよね。あるいは、「意思が通じなくて困っている」なんていうご家族もいるでしょう。

難聴を治すことは難しいですが、周囲が話し方や接し方を変えれば、かなり快適にコミュニケーションがとれるようになります。

この記事では耳が遠い高齢者の特徴や聞こえ方、コミュニケーションのポイントについて解説していきます。耳が遠い人の事情や気持ちを知って、周りの人が支えてあげましょう。

【目次】
1.高齢者の耳が遠い状態―加齢性難聴とは?
加齢性難聴とは
加齢性難聴による問題
2.耳が遠い高齢者の聞こえ方
3.耳が遠い高齢者との接し方
話し始めの合図をする
目を見る
ゆっくり区切って話す
大きく口を動かす
少し大きめの声で話す
4.耳が遠い高齢者と快適にコミュニケーションを取るポイント
小さな間違いを責めない
会話を少し中断する
補聴器や便利グッズを活用する
5.まとめ

1.高齢者の耳が遠い状態―加齢性難聴とは?

高齢者の耳が遠くなる主な原因は加齢性難聴によるものです。加齢性難聴の特徴についてみていきましょう。

  • 加齢性難聴とは

    加齢性難聴は内耳にある音を伝える有毛細胞が加齢で減少し、音の感知や増幅をする機能が低下することで起こります。また、脳へ音を伝達する神経経路のトラブルや認知機能の低下が影響しているともいわれています。

    加齢性難聴の現れ方には個人差がありますが、国際長寿医療研究センターの難聴有病率の調査によると、早い人は40代から始まり、70代になると男性は5人に1人、女性は10人に1人の割合で日常生活に支障のある難聴に悩んでいるようです。

  • 加齢性難聴による問題

    加齢性難聴を発症すると社会生活や精神状態に悪い影響がでます。少しずつ耳が遠くなるため本人が自覚できずに対処が遅れると周囲の音や声を聞き逃して、思わぬ事故にみまわれる可能性があります。

    また、会話がうまくいかない経験を繰り返したり、何度も聞き返すのが悪いと感じたりすることで、理解していないのにそのままにして問題が起きるケースも増え、徐々に引っ込み思案になってしまう人もいます。

    そうして難聴をきっかけに高齢者の社会的な交流が減ると、認知機能の低下や孤立を招きかねません。

    さらに、難聴を持つ人は半数近くが耳鳴りに悩まされることも分かっています。難聴の不安に耳鳴りによるストレスや睡眠不足が加わり、うつ状態になる人も珍しくありません。

2.耳が遠い高齢者の聞こえ方

難聴は外耳から中耳の間に問題がある「伝音性難聴」と内耳や神経系の障害によって起こる「感音性難聴」の2つに分かれますが、加齢性難聴は感音性難聴に属するといわれています。

感音性難聴の聞こえ方は、耳に何か押し当てているように音がくぐもって小さく聞こえる、高い音が聞こえにくい、会話の子音の聞き分けが難しいことです。

<加齢性難聴の聞こえ方の特徴>

  • 耳がこもったような感じになり、音がはっきり聞こえない
  • 高い音から聞こえづらくなる
  • 音としては聞こえても、言葉としては聞き取りしにくい
  • 高周波の子音や無声子音「カ行・サ行・タ行・パ行・っ」が聞き取りにくい
  • 早口や背景に雑音があると聞こえにくい
  • 小さい音は聞こえにくいが、大きな音には敏感になる

難聴の人は脳が聞こえを補充しようとするため、大きな音や甲高い子どもの声などは強く響いて不快に感じやすくなります。耳の遠い高齢者と会話をする際は、大声で話す以外の配慮も必要なのです。

3.耳が遠い高齢者との接し方

では耳が遠い高齢者とコミュニケ―ションをとるには、どのような接し方が良いのでしょうか? 5つのポイントをご紹介します。

  • 話し始めの合図をする

    耳が遠い人は急に話しかけても対応できないことがあるので、まず視線を合わせて声かけし、話し始めの合図をしましょう。心の準備をしてから会話すると内容が理解しやすくなります。

  • 目を見る

    会話中の表情やしぐさもコミュニケーションを助ける大切なポイントです。正面から目を見て話しましょう。音がまっすぐに届き、表情の変化や口の動きも見られます。耳元で低い声で話すのが有効な場合もありますが、「かえって聞き取りづらい」「距離が不快」という人も多いので相手に合わせて行うことが大切です。

    片耳に補聴器をつけている場合は、目を合わせた後につけている方向から話しかけます。補聴器は1~2mくらい距離があった方が聞き取りやすいので、近づき過ぎに注意しましょう。

  • ゆっくり区切って話す

    難聴の高齢者は音から話の内容を推測して理解します。できるだけゆっくりしたスピードで話し、単語ごとに区切って考える時間を作ってあげましょう。ゆっくり話すことで、聞き取りにくい子音も分かりやすくなります。

  • 大きく口を動かす

    口を大きく動かすことで、話す側も自然とゆっくりハキハキ話せるようになります。聞き取りにくいカ行・サ行・タ行・パ行の音は特に意識しましょう。高齢者によっては、口の動きから話を推測できるようになります。

  • 少し大きめの低い声で話す

    難聴の人は小さい声が聞きとりづらいのがもちろんですが、怒鳴るような大きな声も響きすぎて不快に感じます。やや大きめの低い声で話すように心がけましょう。

4.耳が遠い高齢者と快適にコミュニケーションを取るポイント

耳が遠い高齢者との会話は難しいものです。すぐにわかり合えないことで気持ちがあせったり、苛立ちを感じたり、お互いにストレスを感じる場面は珍しくありません。快適にコミュニケーションをとるために3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 小さな間違いを責めない

    聞き間違いが続いても、大きな問題にならなければ指摘したり責めたりしないようにしましょう。高齢者は自尊心を失い、こちらもやきもきする…と負のループになりかねません。

    難聴の高齢者は聞き間違いや勘違いが増えて不安な状態です。間違いが続いたときは、責めるよりも「さすが◯◯さん」「◯◯さんはよく知ってますね」と、高齢者の自信につながるような声掛けをして自信につなげる方が大切です。要件はまた改めて仕切り直しましょう。

  • 会話を少し中断する

    耳の遠い高齢者との会話がスムーズにいかなくなったら小休止を取りましょう。お互いの感情がヒートアップする前に、トイレに行ったり、飲み物を飲んだりしたり、席を立つなどして、会話を一時中断して気持ちを落ち着けます。数秒、深呼吸するだけでも随分と違いますよ。

  • 補聴器や便利グッズを活用する

    耳が遠くなったと感じたら補聴器やサポート用品を活用するのもおすすめです。耳かけ型、耳穴型、ポケット型など様々な種類があるので、症状や好みに合うものを耳鼻咽喉科で相談して選ぶといいでしょう。

    難聴者用の便利グッズも最近はたくさん販売されています。体温測定の完了を振動で知らせる振動体温計や振動式の目覚まし時計など、日常生活を助けてくれるアイテムは難聴者で自らできることを増やし、自信にもつながります。

5.まとめ

耳が遠い高齢者のほとんどは加齢で内耳や神経の機能が低下する加齢性難聴です。40代くらいから徐々に進行し70代以上になると3人に1人が難聴になるといわれています。高音や小さい音、会話が聞き取りにくく、大きな音は響いて不快に聞こえるのが特徴です。

難聴の高齢者は様々な情報から会話を推測して理解します。話すときは、話し始めの合図をして、目を見て表情や口が見えるようにすると伝わりやすくなります。聞こえをよくするには、やや大きめの低い声で、ゆっくり区切って話しましょう。

難聴の高齢者はコミュニケーションの失敗で自信を失い、心を閉ざしてしまう恐れがあります。会話がスムーズにいかなくても責めないように、広い気持ちで接することが大切です。

参考:一般財団法人 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会HP ほか

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