健康コラム

高齢者の発熱は要注意!初期サインや発熱の原因とは?

高齢者は調子が悪いときでも、発熱がみられないことがあります。平熱だと健康だと思いがちですが、気づかず病気が進行している恐れがあるため、体温だけで体調を判断するのは危険です。

今回は、高齢者の発熱の原因や体調不良のサインをご紹介します。発熱時の対処法についても解説しますので、適切に対処していきましょう。

1.高齢者の発熱の特徴

高齢者は免疫力低下により風邪などの感染症にかかりやすいものの、若い人のようにすぐに高熱になりにくいとされています。まずは、高齢者の発熱の特徴と病気のサインについて詳しく解説します。

  • 高齢者の発熱の特徴

    高齢者は病気でも微熱程度にしか発熱しない場合があります。

    発熱は細菌やウイルスの増殖を抑えるための防御反応です。しかし、加齢にともない免疫力が低下すると細菌への抵抗力も弱まり、熱が上がりにくくなります。そのため、高熱が出やすいインフルエンザウイルスのような病気でも微熱程度しか見られず、気づかぬうちに症状が進行している恐れがあります。

    また、筋肉量の少ない高齢者は若年層より平熱が低く、熱が出にくい傾向が見られます。中でも関節疾患などの治療で解熱鎮痛薬を服用していると強制的に熱を下げてしまうため、「発熱していないから大丈夫」とも言い切れません。

    日頃の体温測定に加え、高齢者の全身状態を目で見て健康管理を行いましょう。

  • 高齢者の病気のサイン

    高齢者の発熱が明らかではない、微熱であっても「いつもと比べて様子がおかしい」と思ったら、病気のサインかもしれません。以下の様子が見られたら、自己判断せず病院を受診しましょう。

    ・食欲がない

    ・笑顔が見られない

    ・顔色が悪い

    ・咳や鼻水がある

    ・悪寒の訴えがある

    ・頭痛や下痢、嘔吐がある

2.高齢者の発熱の原因

高齢者の発熱では、主に次のような原因が考えられます。

・感染症(風邪・肺炎・腎盂炎など)

・膠原病(関節リウマチ・血管炎など)

・褥瘡

・脱水症

・がん など

高齢者の発熱で多く見られる要因は、風邪や肺炎などの感染症です。寝たきりの場合は誤嚥性肺炎のリスクも高まります。

また、関節リウマチなどの膠原病では、正常な細胞を病原体と認識してしまい攻撃することで熱が出るようになります。がんも同様に、がん細胞を攻撃するために熱が出たり、がん自体が発熱したりする場合があります。

精密検査をしても原因が分からない発熱は「不明熱」と呼ばれます。正確には「3週間以上発熱し、かつ3回38.3℃以上(口腔内温度)となり、3回の外来あるいは3日間の入院でも診断が確定しないもの」と定義されています。原因疾患は感染症や膠原病、悪性腫瘍など様々で、原因を特定できないケースは3割程度です。

3.高齢者の発熱時のケア

高齢者に発熱が見られた時は、体温上昇期、ピーク時などに分けて適切なケアを行いましょう。

・熱の上がり始めは、温かくして寝かせる

・熱が上がりきったら首、わきの下、太ももの付け根などを冷やす

・汗を拭きとりこまめに水分補給をさせる

熱の上がり始めは体温を上げようとしている段階なので、保温性の高いパジャマを着せたり、布団をかけたりしてゆっくり休ませてあげましょう。熱が上がりきったら、首やわきの下など太い血管の近くを冷やし、体温を下げます。

発熱時は大量に発汗するため、こまめな水分補給が必要です。高齢者はのどの渇きを感じにくいので、少量ずつでもこまめに与えるといいでしょう。

高熱で強いだるさを訴えている場合は、解熱剤を使用しても構いません。その場合は、解熱剤の服用日時と体温の推移を記録し、病院を受診する際に医師に提示しましょう。

4.高齢者の発熱の判断には日頃の体温測定が大切

高齢者の発熱にいち早く気づき、病気のサインを見逃さないためには、日頃の体温測定で平熱を知っておくことが大切です。

平熱は、毎日同じ時間、条件で何日か計測して平均値を割り出します。運動後や食後に体温を測ると数値が高めに出やすいので、食間など体温の変動が少ない時間帯に行うことがポイントです。

平熱は個人差が大きく、一概に「37.0℃未満だから大丈夫」と判断することはできません。平常時より1℃以上高ければ発熱と捉え、体調不良を感じていないか、顔色はどうか確認しましょう。

5.まとめ

高齢者は一般的に平熱が低く、免疫の働きも弱いため、熱が出る病気にかかっても微熱程度しか出ない場合があります。発熱したときは重症になっているケースが多いため、日頃から全身状態を観察して病気のサインを見逃さないことが大切です。

体調を把握するひとつの手段として、毎日の体温測定が役立ちます。36℃台でも平熱より1℃以上高ければ体調不良を疑い、食欲や顔色などいつもと違う様子が見られたら医療機関の受診を検討しましょう。

発熱時は、体温上昇時に温める、ピーク時に冷やすことがポイントです。発汗により水分が失われるため、こまめな水分補給を忘れずに行うようにしてください。

【参考サイト】

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/ooi/201706/551696.html

日経DlonlineHPほか

https://www.shionogi.com/jp/ja/sustainability/informations-for-id/senior_navi/symptom/fever.html

https://www.terumo-taion.jp/health/senior/article06.html"

https://www.azumien.jp/contents/method/00026.html

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/hatsunetsu.html

https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/syobohonbu/kyukyu/oukyuuteate/1415777730790.html

https://lidea.today/articles/712

http://www.asaishikai.jp/tayori/tayori05.html

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_47_1_1.pdf

教えてくれたのは・・・
錦 惠那 先生
【保有資格】
内科専門医、産業医
【プロフィール】
関西圏の医学部卒業。現在は内科医として市中病院で診療を行っている。
腎臓病、透析医療を専門分野とし、産業医としても活動している。病気の予防は治療と同等に重要であり、予防医学の理解を深めてもらうため、病気やヘルスケア情報の発信にも取り組んでいる。
私生活では1児の母でもあり、日々育児にも奮闘している。

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