健康コラム

妊活の選択肢って何があるの?

妊活は身体の状態、年齢などを考慮して段階的に進めていき、最終的には不妊治療を行う流れになるのが一般的です。不妊治療にもいくつかのステップがあり、体や心の負担、費用面などを考慮しながら進めていくことになります。

本記事では、初期段階のタイミング法から、人工授精、体外受精(IVF)、そして高度な顕微授精(ICSI)まで、不妊治療の基本的な流れと各ステップアップの目安をわかりやすく紹介します。

妊活を考えている方や、これから治療を始めようとしている方はぜひ参考にしてください。

1.不妊治療のステップ①タイミング法

タイミング法は不妊治療の第一段階として用いられる治療方法で、妊娠しやすい排卵日前に合わせて性交のタイミングを調整することにより、妊娠の可能性を高めます。

タイミング法は体への負担が少なく、基本的に薬物治療や手術も必要ないため比較的簡単に取り入れられるのが特徴です。

基礎体温の記録や排卵検査薬を活用して排卵日を予測することで、自宅でも実践することができます。

排卵日を正確に把握することが成功のカギとなるため、毎朝同じ時間に基礎体温を測定する習慣をつけておくことが大切です。

必要に応じて病院でホルモン検査や超音波検査を受けながら、医師のアドバイスをもとにタイミングを合わせると、より精度の高いアプローチが可能になります。

  • 開始・ステップアップの目安

    タイミング法は妊活のファーストステップとして取り入れやすい方法です。体への負担が少ないため、妊活を始めたいと思ったタイミングですぐに取り組むことができます。

    ただし、一定期間タイミング法を試しても妊娠に至らない場合や、基礎体温が不安定で排卵日の予測が難しい場合は、早めに産婦人科を受診することをおすすめします。特に30代以上の方や、婦人科疾患を疑う症状がある方は、早期の検査やサポートを受けることで、よりスムーズに妊活を進めることができるでしょう。

    タイミング法をしばらく行って効果が出ない場合は次の人工授精にステップアップするのが一般的です。

2.不妊治療のステップ②人工授精

人工授精はタイミング法で妊娠に至らなかった場合に検討される次のステップで、排卵の時期に合わせて精子を人工的に子宮内へ注入する方法です。

人工授精は性交のタイミングが取りづらい場合や、精子の運動率が低い場合などに有効とされています。自然妊娠に近い方法であるため、体への負担が比較的少ないのも特徴です。

2022年4月からは人工授精やこれ以降ご紹介する不妊治療の多くが保険適用となり、経済的な負担が軽減されました。そのため、以前より多くの方が治療に取り組みやすくなっています。

  • ステップアップの目安

    一般的には、タイミング法を6周期以上試しても妊娠しなかった場合に、人工授精へのステップアップが推奨されます。

    ただし、年齢や体調を考慮して早めに人工授精を選択するケースも考えられます。特に精子の状態に問題がある場合や、男女どちらかの性機能に不調がみられる場合には早期に人工授精を進めることが推奨されます。

3.不妊治療のステップ③体外受精(IVF)

体外受精(IVF)は、それまでのステップで妊娠に至らなかった場合に選択される生殖補助医療(ART)の一つです。卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻すことで妊娠を目指します。

この治療法ではまず、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激して複数の卵子を体内で育てます。その後採卵を行い、取り出した卵子と精子を体外で受精させます。受精卵は数日間培養され、発育の良い胚を選んで子宮内に移植します。

  • ステップアップの目安

    体外受精に進むタイミングは年齢や不妊期間、これまでの治療経過によって異なりますが、一般的には人工授精を3~6回行っても妊娠に至らなかった場合に検討されます。

    また、女性の年齢が高く自然妊娠の確率が低いと判断された場合や、卵管の閉塞がある、精子の数が極端に少ない(乏精子症)と診断された場合には、より早い段階で体外受精に進むこともあります。

4.不妊治療のステップ④顕微授精(ICSI)

顕微授精(ICSI)は、体外受精の一種であり、精子が卵子に到達しにくい、または受精能力が低い場合に行われる高度な不妊治療法です。顕微鏡下で選んだ精子を、細いガラス管を用いて卵子の中に直接注入することで、受精の確率を高めます。

治療の流れは体外受精と似ており、まず排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激し、卵子を採取します。次に、男性から精子を採取し、顕微鏡下で元気な1匹を選んで卵子に注入します。受精後は数日間培養し、状態の良い胚を選んで子宮に戻します。

この方法により、精子の数が少ない方や運動率が低い方でも受精の可能性が広がります。

  • ステップアップの目安

    顕微授精は、体外受精を行っても受精に至らなかった場合や、精子の数や運動性などに重大な問題があると診断された場合に検討されるステップです。

    例えば精子の通り道が閉塞していることが原因で起こる「閉塞性無精子症」では精巣の機能は正常であることが多いため、精巣から直接精子を採取したあと顕微授精によって受精を目指します。

5.まとめ

不妊治療は一人ひとりの状況に応じて進め方が異なります。

体への負担が少ないタイミング法から始め、必要に応じて人工授精や体外受精、顕微授精へとステップアップしていくのが一般的な流れです。

妊活においては決して焦らず自分たちに合った方法を選び、必要なタイミングで医療機関のサポートを受けながら前向きに取り組むことが大切です。本記事の内容を参考に、ご自分に合った対策を見つけていきましょう。

教えてくれたのは・・・
錦 惠那 先生
【保有資格】
内科専門医、産業医
【プロフィール】
関西圏の医学部卒業。現在は内科医として市中病院で診療を行っている。
腎臓病、透析医療を専門分野とし、産業医としても活動している。病気の予防は治療と同等に重要であり、予防医学の理解を深めてもらうため、病気やヘルスケア情報の発信にも取り組んでいる。
私生活では1児の母でもあり、日々育児にも奮闘している。
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