健康コラム

仮面高血圧のリスクとは? 3つのタイプと注意点

「高血圧でもおかしくない生活なのに、測っても何ともない」そんな人は、仮面高血圧かもしれません。

「正常血圧の仮面をつけた高血圧」と呼ばれる仮面高血圧は、発見が難しい上、脳卒中などのリスクは、一般的な高血圧の人よりも高いと言われています。一時的な測定値に問題はなくても油断は禁物です。

今回は、仮面高血圧の基本的な知識や種類、注意事項、把握する方法を解説します。血圧に不安がある方は、ぜひご一読下さい。

1.仮面高血圧とは?

仮面高血圧は、実際には高血圧であるにもかかわらず、測定すると正常値を示す状態のことです。

例えば、病院の診察室で測った血圧は正常値なのに、自宅や職場で測ると高血圧を示すというのは、よくあるケースです。

このように、本当は高血圧なのに「正常血圧の仮面を付けている」ことから、仮面高血圧と呼ばれます。実に、正常血圧と診断される人の10~15%は仮面高血圧だと考えられています。

病院の診察や健診時に発見するのが難しいため、リスクは通常の高血圧患者より高くなります。仮面高血圧の人は高血圧治療を受けている高血圧患者に比べて、脳卒中や心筋梗塞の発症率が3倍高くなったと報告された研究結果もあるほどです。

2.仮面高血圧には3つのタイプがある

仮面高血圧が起こる原因は血圧の一日の変動によるものです。血圧が上がりやすい時間帯によって3つのタイプに分けられます。それぞれの特徴とリスクをみていきましょう。

  • 早朝高血圧

    病院の診察時の血圧は140/90mmHg未満でも、早朝に自宅で測定した血圧の平均値が135/85mmHg以上の場合、早朝高血圧と診断されます。

    早朝高血圧には、夜間高血圧から継続して血圧が高い「持続型」と、朝になると急激に血圧が上がる「モーニングサージ型」の2タイプがあります。

    夜間から早朝にかけては血圧が最も変動しやすく、早朝高血圧は大きなリスクになります。実際、脳卒中や狭心症が早朝の時間帯に多発する要因のひとつとして考えられています。

    また、治療中の患者さんであっても、服薬直前の時間帯にあたる早朝は血圧が高くなりやすいので注意が必要です。

  • 昼間高血圧

    病院や自宅で測定した血圧が正常値でも、職場や学校などで日中に測定した血圧の平均値が135/85mmHg以上の場合、昼間高血圧と診断されます。

    昼間血圧症の主な原因は、精神的・身体的ストレスです。過ごしている環境(例えば職場や学校など)で過度なストレスにさらされていると血圧が上昇します。

    昼間血圧症は肥満症や家族に高血圧の人がいる方、副交感神経が活発な昼間に睡眠をとる夜勤労働をする方に多くみられます。

  • 夜間高血圧

    病院や自宅で日中に測定した血圧が正常値でも、夜間に測定した血圧の平均値が120/70mmHg以上の場合、夜間高血圧と診断されます。

    変動幅の小さい夜間の血圧の平均値が上昇するということは、昼間の血圧が上昇するよりも、脳心血管疾患や認知機能の低下リスクがより高いということです。

    就寝前や早朝より就寝中の血圧が高い人は、特に脳心血管系疾患に注意が必要です。夜間高血圧が翌朝になっても続き、早朝高血圧につながるケースもみられます。

3.仮面高血圧の人が注意したい2つのこと

仮面高血圧だと分かったら、治療と同時に以下の2点に注意して過ごしましょう。

  • 生活習慣に注意する

    仮面高血圧の対策として最も有効なのは、血圧の上昇を抑えるための生活習慣です。

    まずは日々の食生活を見直しましょう。塩分の過剰摂取や、高カロリーな食事は控えます。取り過ぎた塩分を排出するためにミネラルを積極的に摂取しましょう。

    ミネラルは野菜や果物に豊富に含まれるカリウム、海藻やナッツ類に含まれるマグネシウム、小魚や牛乳に含まれるカルシウムを、食事にバランスよく取り入れます。

    また、アルコールの過剰摂取は血圧を上昇させるので適量で切り上げましょう。

    他にも、喫煙の習慣や睡眠不足、運動不足、過度なストレスなどは、脳心血管疾患のリスクを高めます。禁煙や減煙、1日6〜7時間の睡眠時間の確保、1日30分以上の運動などを心がけましょう。

  • 寒い時期に注意する

    仮面高血圧の人は、寒い時期の血圧の急上昇に注意しなければなりません。

    血圧は時間や場所だけでなく、季節や気温にも影響を受けます。気温の高い夏季には、血管が拡張して血圧が低くなりますが、気温の低い冬季は、血管が収縮して血圧が高くなります。

    冬季は血圧の変動も大きく、特に変動幅が大きい朝の時間帯には、急激に血圧が上昇することも少なくありません。実際、脳卒中や心筋梗塞といった、脳心血管疾患の発生は、冬の午前中に集中しています。

    寒い時期には脱衣所やトイレを温めるのはもちろん、外出時の寒さ対策を徹底し、朝のうちは激しい運動を避けて体の負担を減らすなど注意が必要です。

4.自宅でも血圧を測って変化を把握しよう

仮面高血圧の早期発見には、自宅でもさまざまな時間帯に血圧を測定して変化を把握することが大切です。

家庭用血圧計を用意して、就寝前、起床時、昼休みなど一日の中で時間を決めて複数回測ります。季節や行動でも血圧が変化するので、毎日継続するようにしましょう。

自分の状態に最適な治療が受けられるため、血圧の測定記録は診察のたびに持参しましょう。薬の摂取による血圧の上下数値や効果の持続時間などが分かるので、より精度の高い治療が受けられるでしょう。

5.まとめ

仮面高血圧は、高血圧が測定時に示されず見逃されやすい状態です。発見が難しいため通常の高血圧患者よりも、脳心血管疾患の発症率が高くなる傾向があります。

血圧の変動で起こる仮面高血圧は血圧が高くなる時間帯ごとに、早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧と、3つのタイプに分けられます。

早朝高血圧は脳心血管疾患や臓器障害のリスクが高く、昼間高血圧は仕事や学校の過度なストレスが影響しています。夜間高血圧は、脳心血管疾患に加えて認知機能の低下リスクも伴います。

仮面高血圧は日々の食習慣や睡眠、喫煙や飲酒習慣の見直しと、血圧の変動幅が大きくなる、寒い時期の急上昇対策が必要です。また、1日に何度か血圧を測り記録する習慣を作って、早期発見に努めることも大切です。

【参考サイト】

「仮面高血圧」(かい内科クリニック)
https://kai-clinic.net/explanation/high03/

「仮面高血圧」(徳島県医師会Webサイト)
https://www.tokushima.med.or.jp/article/0000349.html

「白衣高血圧と仮面高血圧(White coat hypertension and masked hypertension)」(慶應義塾大学保健管理センター)
http://www.hcc.keio.ac.jp/ja/health/2017/09/white-coat-hypertension-and-masked-hypertension.html

「高血圧治療ガイドライン2019」(日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会)
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf

「ホントは怖い「仮面高血圧」」(済生会)
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/masked_hypertension/

「朝日がのぼると血圧も上がる!?「早朝高血圧」」(武田薬品工業株式会社)
https://www.takeda.co.jp/patients/hypertension/qa602.html

「血圧の大敵!ストレスにご用心「昼間高血圧(ストレス下高血圧)」」(武田薬品工業株式会社)
https://www.takeda.co.jp/patients/hypertension/qa604.html

「眠っている間の血圧に注意「夜間高血圧」」(武田薬品工業株式会社)
https://www.takeda.co.jp/patients/hypertension/qa603.html

「寒さに注意 高血圧|仮面高血圧|白衣高血圧」(総合南東北病院)
https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/200701/kouketuatu.htm

「危険な「仮面高血圧」に気を付けよう」(協会けんぽ 健康サポート)
https://kenkousupport.kyoukaikenpo.or.jp/support/01/20130607.html

「高血圧症には早期治療を!」(方南町さくらクリニック)
https://www.honancho-clinic.com/sp/column/kouketsuatsu.html

「コラム・睡眠と血圧」(大阪市住吉区の内科、循環器内科の坂口医院)
https://www.sakaguchi-iin.com/colum/no18

「自宅でも血圧を測ろう!」(武田薬品工業株式会社)
https://www.takeda.co.jp/patients/hypertension/qa605.html

「サイレントキラーを見逃す仮面高血圧とは?」(医療法人 賛健会 城内病院)
https://jyonai-hp.sankenkai.or.jp/cardiology/masked-hypertension/

教えてくれたのは・・・
錦 惠那 先生
【保有資格】
内科専門医、産業医
【プロフィール】
関西圏の医学部卒業。現在は内科医として市中病院で診療を行っている。
腎臓病、透析医療を専門分野とし、産業医としても活動している。病気の予防は治療と同等に重要であり、予防医学の理解を深めてもらうため、病気やヘルスケア情報の発信にも取り組んでいる。
私生活では1児の母でもあり、日々育児にも奮闘している。

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