健康コラム

血圧に左右差があっても問題ない? ~注意点と対処法~

「左右両方の血圧を測ってみたら、結構差がある…。」と気になったことはありませんか?
何か問題があるのではないかと、心配になりますよね。

結論からいうと、多少の左右差は特に問題ない場合がほとんどです。ただし、左右差が10mmHgを超えるほど大きい場合には、何らかの異常のサインかも知れません。

今回は血圧の左右差について、注意点や対処法をご紹介します。この記事を読めば、きっと不安が解消できますよ。

【目次】
1.血圧が左右で多少異なるのは問題ない
2.血圧の左右差が大きい場合は注意が必要
3.血圧の左右差が大きい場合の対処法
病院で検査をする
バランスの取れた食事を意識する
適度に運動する
適正体重を維持する
飲酒・喫煙を控える
日常的にストレスを発散する
4.血圧は毎日決まった時間に測定することが大切
5.まとめ

1.血圧が左右で多少異なるのは問題ない

血圧が左右で多少異なっても、基本的には問題ありません。一般的に、右上腕の血圧は左上腕の血圧よりもわずかに高いといわれます。

これは体の構造上の理由によるもので、大動脈から上腕へ流れる鎖骨下動脈という血管が、右側寄りの位置で早く分岐するためです。

また、血管の太さも左右で異なる場合が多いため、多少違う血圧の数値が出るのは、ごく自然なことだと考えられます。血圧の左右差が10mmHgに満たない場合は、特に気にする必要はないでしょう。

ただし、10mmHg以上の数値差が出る場合は注意が必要です。

2.血圧の左右差が大きい場合は注意が必要

血圧の左右差が10mmHg以上の場合には、体に何らかの異常があると考えて原因を検査した方が良いでしょう。考えられる要因として、以下のような血管系の病気が挙げられます。

<血圧の左右差が10mmHg以上になる主な疾患>

  • 動脈硬化症による鎖骨下動脈狭窄(さこつかどうみゃくきょうさく)または閉塞
  • 大動脈解離
  • 大動脈炎症候群
  • 放射線治療後
  • 外傷・カテーテル操作による動脈解離または損傷

なかでも「動脈硬化症による鎖骨下動脈狭窄または閉塞」は、最も発症頻度の高い疾患です。

動脈硬化とは、動脈の壁が厚くなることで、血管の弾力性やしなやかさが失われる病気です。動脈硬化がおきると、血管が狭くなり、時には詰まってしまう場合もあります。

血液によって運ばれる酸素や栄養が体に行き届かなくなり臓器や組織の機能が低下するだけでなく、血流を詰まらせると、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性もあり、大変危険です。

動脈硬化は血管の老化現象なので、年を重ねれば、誰にでもおこりえます。また初期段階では自覚症状がほとんどないまま進行するため、「サイレントキラー」とも呼ばれます。

3.血圧の左右差が大きい場合の対処法

血圧の左右差が10mmHg以上ある場合の対処法は、まず病院検査、その後生活習慣の見直しと改善です。詳しく解説します。

  • 病院で検査をする

    血圧の左右差が10mmHg以上ある場合は病気の可能性を考慮して、病院で詳しい検査を受けましょう。

    受診先は循環器内科がおすすめです。心臓や血管の病気を専門としているので、血圧の左右差に関する詳しい検査が受けられます。

    近くに循環器内科がない場合には、かかりつけの内科医に相談しましょう。希望すれば、詳細な検査ができる専門病院を紹介してもらえる場合もあります。

  • バランスの取れた食事を意識する

    血圧と食生活は大きな関係があります。医師が推奨するバランスの良い食事を取るのも、大切な対処法です。

    • 高血圧の原因となる、塩分、コレステロール、飽和脂肪酸はなるべく控える。
    • ナトリウム(塩分)の排出を促すはたらきのある野菜や魚類、果物を積極的に摂る。

    このように日々の食事で、塩分と脂肪分、カロリーは抑え、食物繊維の摂取を増やすのが健康の基本です。この機会に食材選びや調理方法を見直してみましょう。

  • 適度に運動する

    血圧の左右差を減らすには、適度な運動も効果的です。筋力は高血圧の原因になる脂肪を燃焼させ、運動は血管の柔軟性を高めるため動脈硬化や高血圧の予防になります。

    ウォーキングやランニングといった有酸素運動に、縄跳びやヨガといった、全身の筋肉を使う運動を組み合わせたメニューがおすすめです。無理のない範囲から始めて習慣化を目指しましょう。

  • 適正体重を維持する

    適正体重の維持も、血圧の左右差を減らすのに効果的です。肥満はもちろん、痩せすぎも動脈硬化や高血圧の原因となります。

    ただし、無理なダイエットは必要ありません。BMI18.5~25の適正体重の維持を目指します。BMIは「体重(kg)÷身長²(m)」の計算式で導き出せます。普通体重(MBI22)の目安としては、身長170cmであれば72kg未満、160cmなら64kg未満です。

  • 飲酒・喫煙を控える

    飲酒や喫煙も、血圧に左右差が出る原因のひとつです。

    長期にわたる習慣的な飲酒や過度な飲酒は、アルコールの影響により血管を収縮させ、血圧が上昇しやすくなります。体質にもよりますが、1日の理想的な飲酒量は、男性なら1日にビール中瓶1本、女性はその半分です。

    また喫煙も循環器系疾患の要因の1つです。たばこを吸うと、毛細血管が縮小して血圧が上昇し、高血圧や動脈硬化のリスクが高まります。血圧に不安がある場合は減煙や禁煙をしましょう。

  • 日常的にストレスを発散する

    ストレス発散にも、血圧の左右差を減らす効果があります。人はストレスを感じると、体内で副腎皮質ホルモンが大量に分泌されます。このホルモンは血圧を上昇させて動脈硬化の原因となります。

    日光浴をする、映画鑑賞をする、カラオケに行くなど、自分に合った方法で日常的にストレスを発散しましょう。肥満防止にもつながる、散歩やジョギングなどの軽い運動は特におすすめです。

4.血圧は毎日決まった時間に測定することが大切

血圧の測定は、毎日決まった時間に行いましょう。血圧は、時間帯や過ごす場所、行動パターンなどによって1日の中でも変動するからです。

そのため、左右の血圧をそれぞれ違う時間帯に測っても、正しい数値は分かりません。左右差があると思っていても、実際にはほとんどなかった、あるいは、認識よりずっと大きな差だったという場合も考えられます。

年に一度だけ受ける健康診断で問題がなかったからといって、油断は禁物です。

ストレスや運動、食事の影響もうける血圧は、毎日変動します。また、「病院では低く出るが家では高い」といった仮面高血圧という方も珍しくありません。

毎日同じ時間に自宅で測定することが、病気の予防や早期発見につながります。血圧測定を習慣化し、数値の変動を注意深く見守りましょう。

5.まとめ

血圧の左右差は体の構造上、一般的によくみられるものです。差が10mmHg未満であれば、特に気にする必要はありません。

ただし10mmHg以上になる場合は、動脈硬化や大動脈解離など、何らかの血管系疾患の可能性が高くなります。循環器内科などの病院で詳しい検査をしましょう。

血圧の左右差が大きい時の対処は、生活習慣の改善もポイントになります。日々の食事のバランスや運動、飲酒、喫煙量の見直しの他、適正体重の維持やストレス発散も効果的です。

また、血圧は1日の間でも時間帯や行動パターンでも変化します。病気の予防や早期発見のために毎日決まった時間に測定して正確な数値を把握しましょう。

【参考サイト】

「コラム・血圧の左右差」(大阪市住吉区の内科、循環器内科 坂口医院)
https://www.sakaguchi-iin.com/colum/no20

「あなたの左右の血圧は大丈夫?」(心臓血管センター 金沢循環器病院)
https://www.kanazawa-heart.or.jp/about/pdf/heartful/vol32.pdf

「血圧で左右差があるのはなぜ?差が大きいと危険!考えられる病気とは|病気スコープ」(エンパワーヘルスケア株式会社)
https://fdoc.jp/byouki-scope/features/blood-pressure-left-and-right/

「動脈硬化とは?原因となる心臓や脳の病気や予防方法について解説」(朝日生命保険)
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/seikatsu/arteriosclerosis.html
https%3A%2F%2Fmatsuiclinic.com%2Farteriosclerosis%2F%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E3%81%8C%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%82%8B%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0%2F%0D%0A

「動脈硬化の原因、治療、検査について」(健診会 滝野川メディカルクリニック)
https://www.takinogawa-medical.jp/outpatient/department-list/internal-medicine/kouka.html

「高血圧と食事・栄養素の関係」(Dクリニック東京ウェルネス)
https://www.sumahoshin.or.jp/lab/hypertension/registered-dietitian/

「コーヒー・アルコールと血圧の関係について」(つばさ在宅クリニック西船橋)
https://www.tsubasazaitaku.com/column/column76.html

「高血圧|病気について」(国立循環器病研究センター)
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension-2/

「毎日、血圧を測定しましょう」(バリューHR)
https://www.sageru.jp/bloodpressure/treatment/measurement.html

「家庭で血圧を測るときは、左右の腕で比較してみるといい理由」(ダイヤモンド・オンライン ダイヤモンド社)
https://diamond.jp/articles/-/262523

「アルコールと健康の関係は? 「酒は百薬の長」は本当か」(糖尿病ネットワーク)
https://dm-net.co.jp/calendar/2014/022117.php

「血圧と飲酒の関係性とは?健康的な飲酒量も紹介!」(健達ねっと)
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/15710

教えてくれたのは・・・
錦 惠那 先生
【保有資格】
内科専門医、産業医
【プロフィール】
関西圏の医学部卒業。現在は内科医として市中病院で診療を行っている。
腎臓病、透析医療を専門分野とし、産業医としても活動している。病気の予防は治療と同等に重要であり、予防医学の理解を深めてもらうため、病気やヘルスケア情報の発信にも取り組んでいる。
私生活では1児の母でもあり、日々育児にも奮闘している。

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