健康コラム

フレイルとサルコペニアの違いは何?共通する3つの予防法

「最近疲れやすくて、体を動かすのがおっくう…」そんなときに疑われるのが、フレイルやサルコペニアです。

どちらも加齢による身体能力の低下を指す言葉ですが、精神面や生活への影響がみられるかなど内容には違いがあります。

今回は、フレイルとサルコペニアについて、特徴や原因、セルフチェックの方法などを通して、それぞれの違いが分かるように解説します。自分はどちらの状態なのか気になる方は、ぜひお役立てください。

フレイルとサルコペニアの違いは何?共通する3つの予防法
【目次】
1.フレイルとは?
フレイルの特徴
フレイルの原因
フレイルになりやすい人
フレイルのセルフチェック法
2.サルコペニアとは?
サルコペニアの特徴
サルコペニアの原因
サルコペニアになりやすい人
サルコペニアのセルフチェック法
3.フレイルとサルコペニアの違い・関係性
4.フレイルとサルコペニアに共通する3つの予防法
食事:タンパク質を十分に摂る
運動:日常的に体を動かす
社会参加:外出や家族・知人との交流
5.まとめ

1.フレイルとは?

まずはフレイルとはどのようなものなのかについて、みていきましょう。

  • フレイルの特徴

    フレイルは、加齢によって筋力や活力が低下した“虚弱状態”を指します。身体能力の低下だけでなく、精神的、社会生活面にも衰えがみられるのが特徴です。健康な状態から要介護状態へ進む、ちょうど中間の段階と位置付けられています。

  • フレイルの原因

    フレイルが起こる主な原因は以下の3つだと考えられています。

    ① 身体的な活動量の低下(病気による長期安静など)
    ② 認知機能や気力の低下
    ③ 社会とのつながりの低下

    高齢になると仕事の引退、子育ての終了などで、活動量も社会との関わりも減り、やりがいや緊張感などを覚える機会も少なくなるため、注意が必要です。

  • フレイルになりやすい人

    高齢者がフレイルになりやすい理由としては持病の存在もあります。糖尿病や骨粗しょう症、認知症、うつなどは、生活動作や気力の衰えにつながりやすく、フレイルを併発させやすいと言われています。

  • フレイルのセルフチェック法

    フレイルはセルフチェックする方法があります。気になる方は以下のチェック項目で確認してみましょう。

    <フレイルのセルフチェック項目>

    1 体重減少 6ヶ月で2kg以上体重が減っている
    2 筋力低下 握力が以下の数値まで低下している
    男性:28kg未満 女性:18kg未満
    3 疲労感 ここ2週間以上、わけもなく疲れを感じる
    4 歩行速度 1m歩くのに1秒以上かかる(通常歩行速度<1.0m/秒)
    5 身体活動 1週間に1度も運動をしない(軽い運動や体操も含む)

    参考資料:国立長寿医療研究センター「2020年改訂日本版CHS基準(J-CHS基準)」

    • 3項目以上該当する:フレイルの可能性が高い
    • 1~2項目以上該当する:プレフレイルの可能性あり
    • 該当なし:健常
  • フレイルについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご参考ください。
    「フレイルと認知症は互いのリスクを上げる!危険度セルフチェックと予防方法」
    https://www.citizen-systems.co.jp/health/column/article/article_19.html

2.サルコペニアとは?

次に、サルコペニアについてみていきましょう。

  • サルコペニアの特徴

    サルコペニアは、筋肉量の減少や筋力の低下、身体能力の低下が起きている状態のことです。

    一般的な加齢による身体機能低下の範囲を超え、日常生活に支障をきたしている場合や、病的なレベルの筋肉量減少が起きている場合にサルコペニアと診断されます。

  • サルコペニアの原因

    サルコペニアは、加齢が原因の一次性サルコペニアと、加齢以外が原因となる二次性サルコペニアに分けられます。

    一次性サルコペニアは加齢による筋肉量の低下が原因ですが、二次性サルコペニアは栄養不足や活動量の低下、けがや病気などが原因となります。二次性サルコペニアは年齢に関係なく発症する可能性があります。

  • サルコペニアになりやすい人

    一次性サルコペニアは加齢が主な原因なので65歳以上の人はみなさん注意が必要です。

    栄養不足などが原因になる二次性サルコペニアは、やせ型の人、メタボ体型や肥満の人、ダイエットしても効果がない人、リバウンドしやすい人、極端な食事制限をしたことがある人などがなりやすい傾向があります。

  • サルコペニアのセルフチェック法

    サルコペニアのチェック方法は少々複雑です。病院ではさまざまなテストの結果を総合してサルコペニアの診断をします。その中のチェック項目から一部ご紹介します。

    <サルコペニアの診断チェック方法>※診断基準の一部です

    • 歩行速度のテスト
      「6m 歩行速度 <1.0m/秒」かどうかを確認する。6m歩き、1~5mの4mの歩行速度が0.8秒以下の場合、サルコペニアの可能性があると判断できます。
    • SARC–Fテスト
      以下のテストでスコアの合計が4点以上の場合、サルコペニアの可能性があります。
    質問 スコア
    4~5kgのものを持ち上げて運ぶのがどのくらい大変ですか 全く大変ではない=0
    少し大変=1
    とても大変,または全くできない=2
    部屋の中を歩くのがどのくらい大変ですか 全く大変ではない=0
    少し大変=1
    とても大変,補助具を使えば歩ける,または全く歩けない=2
    椅子やベッドから移動するのがどのくらい大変ですか 全く大変ではない=0
    少し大変=1
    とても大変,または助けてもらわないと移動できない=2
    階段を10段昇るのがどのくらい大変ですか 全く大変ではない=0
    少し大変=1
    とても大変,または昇れない=2
    この1年で何回転倒しましたか なし=0    1 ~ 3回=1    4回以上=2

    参考資料:日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年度版」サルコペニア診断基準(AWGS2019)について(表SARC–F)

3.フレイルとサルコペニアの違い・関係性

フレイルとサルコペニアの決定的な違いは、それらが定義する範囲の広さにあります。

サルコペニアが筋肉量の減少や身体機能の低下を定義するのに対して、フレイルは精神機能や社会力の低下も含めたより広い範囲をさします。サルコペニアは、フレイルに含まれると考えていいでしょう。

フレイルに含まれる症状には、筋肉量の低下を指すサルコペニアのほかに、立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)の低下を指す「ロコモ」もあります。

ロコモは、骨や筋肉、関節など運動器の障害によって移動機能が低下した状態をいいます。

サルコペニア(筋肉量の低下)はロコモ(移動機能の低下)の原因の1つと位置付けられています。

4.フレイルとサルコペニアに共通する3つの予防法

最後に、フレイルとサルコペニア共通の予防法を3つ紹介します。

フレイルとサルコペニアは、どちらも生活習慣病や日常の栄養状態、運動習慣、社会との関わりなどが、身体機能の低下を引き起こす原因となっています。普段の生活習慣や過ごし方を見直すことが大切です。

  • 食事:たんぱく質を十分に摂る

    食事の際には、筋肉のもとになるたんぱく質の摂取を意識しましょう。肉、魚、卵、大豆製品といった、良質なたんぱく質をしっかりと摂れるメニューを心がけるといいでしょう。

    日本サルコペニア・フレイル学会のサルコペニア診療ガイドラインでは、1日に適性体重1kgあたり1.0g以上のたんぱく質摂取が予防法として推奨されています。

  • 運動:日常的に体を動かす

    日常的に体を動かすことも有効な予防法となります。ウォーキングなどの有酸素運動と、スクワットなどのレジスタンス運動(筋トレ)を組み合わせて行うのが理想的です。

    ウォーキングのモチベーション維持には歩数計が役立つので、自分に合ったものを探してみるのもおすすめです。

    例えば、シチズンデジタル歩数計TWT512は、ボタンひとつで歩数を0にして計測でき、これまでの最高記録の歩数や歩行距離の保存、目標設定と達成度の表示などウォーキングを楽しめる機能が搭載されています。

  • 社会参加:外出や家族・知人との交流

    社会参加もフレイルやサルコペニアの予防に効果的です。家族はもちろん、友人や仲間と気軽に交流できると、心身が活発化して健康維持につながります。

    外出による筋肉量の維持や食事する機会の増加、人とのコミュニケーションが増えれば認知機能低下の予防にもなります。仕事や趣味、地域活動に取り組む機会があれば、積極的に参加しましょう。

5.まとめ

フレイルもサルコペニアも心身の虚弱状態を指す言葉です。ただし、この2つには違いがあります。

高齢者に多いフレイルは身体能力のほか、精神的、社会生活面にも衰えがみられる状態を指しており、加齢による身体的機能の低下や社会とのつながりの減少が主な原因です。

一方、サルコペニアは、筋肉量の減少が、筋力や身体能力の低下を引き起こしている状態です。加齢が原因の一次性サルコペニアと、けがや病気、栄養不足などが原因の二次性サルコペニアに大別されます。

サルコペニアは身体機能の低下、フレイルはそれに加えて精神機能や社会性の低下も含むより広く生活に支障をきたしている状態をさしています。

フレイルやサルコペニアを予防するために、筋肉量を維持するたんぱく質が豊富な食事、日常的な運動、外出や家族・知人との交流を積極的に取り組んでいきましょう。

【参考サイト】

「サルコペニアとフレイルの違いは? ~フレイルではサルコペニアより広範囲な衰弱がある~」(サルスクリニック【内科・糖尿病内科・腎臓内科・腹膜透析・健康診断】)
https://salusclinic.jp/column/lifestyle-related-diseases/article-136/

国立長寿医療研究センター「2020年改訂日本版CHS基準(J-CHS基準)」
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/frailty/documents/J-CHS2020.pdf

「「フレイル」とは?医師がわかりやすく解説。簡単フレイルチェックや予防のこと」(Kampoful Life)
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/body/?p=1082

「元気高齢者のための健康長寿ガイドブック」(大阪府後期高齢者医療広域連合)
https://www.kouikirengo-osaka.jp/material/pdf/guidebook/2021-12guidebook-page/kenkotyoju-guidebook2021-12.pdf

「フレイルとは」(健康長寿ネット)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html

「フレイルの診断」(健康長寿ネット)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/shindan.html

「サルコペニア診療ガイドライン2017年版一部改訂」(日本サルコペニア・フレイル学会)
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001021/4/sarcopenia2017_revised.pdf

「【図解】サルコペニアとは?フレイルとの違いは?特徴や対策方法」(ネスレ ヘルスサイエンス オンラインショップ)
https://healthscienceshop.nestle.jp/blogs/isocal/knowledge-malisocal-004-index

「フレイルとサルコペニアとロコモの違いについて教えてください」(介護のほんね)
https://www.kaigonohonne.com/questions/31#h2-4

「「フレイル」「ロコモ」「サルコペニア」とは?」(NDソフトウェア(株))
https://www.ndsoft.jp/column/56147

「歩数計」(シチズン・システムズ株式会社)
https://www.citizen-systems.co.jp/health/products/health03.html

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