血圧編

平均血圧・脈圧・脈拍とは?血圧管理の基礎用語と数値の見方

「血圧は上の血圧と下の血圧の数値で表されることが一般的ですが、一緒によく見かける「平均血圧、脈拍、脈圧」って何だろう?と疑問に思ったことはありませんか。

血圧の計測結果に記されている項目や数値は、どれも健康状態を表す大切なものです。血圧管理をするときは、基礎用語とその数値の読み方を押さえておきましょう。

今回は、平均血圧・脈圧・脈拍の意味、上の血圧と下の血圧の違い、それぞれの数値の見方を解説します。毎日の健康管理や病気の早期発見にお役立てください。

【目次】
1.平均血圧・脈圧・脈拍の意味
平均血圧
脈圧
脈拍
2.収縮期血圧と拡張期血圧とは
収縮期血圧(上の血圧)
拡張期血圧(下の血圧)
血圧の分類と数値の見方
3.平均血圧・脈圧・脈拍の数値の見方
平均血圧の数値の見方
脈圧の数値の見方
脈拍の数値の見方
4.血圧管理は毎日の計測が大切
5.まとめ

1.平均血圧・脈圧・脈拍の意味

まずは、平均血圧・脈圧・脈拍の意味から解説していきます。

平均血圧
平均血圧は常に動脈にかかっている圧力のことです。血管の弾力性、細動脈、毛細血管の状態を表しています。【平均血圧=脈圧(収縮期血圧-拡張期血圧)÷3+拡張期血圧】の式で算出されます。

脈圧
脈圧は収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)の差です。血管の弾力性や大動脈硬化の程度を表しており、脈圧の大小で動脈硬化の進行度合いや末梢血管の血流の状態がわかります。

脈拍
脈拍は一定時間内に心臓が収縮運動(拍動)をした回数です。通常は1分間の拍動回数が記載されます。拍動の動きは動脈に現れるため血圧と同時に測定可能です。その数値は不整脈や甲状腺機能亢進症の発見などに役立ちます。

2.収縮期血圧と拡張期血圧とは

血圧の測定値はなぜ、収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)で記載されるのでしょうか? それは、それぞれの値が示す健康状態があるからです。

収縮期血圧(上の血圧)
収縮期血圧は心臓が縮んで血液を押し出している時の血圧です。「上の血圧」とも呼ばれ、血圧値が最大になります。収縮期血圧が基準値より高い場合は脳出血や脳梗塞、低い場合は敗血性ショックなどの循環不全が疑われます。

拡張期血圧(下の血圧)
拡張期血圧は送り出した血液が戻って心臓が膨らんでいる時の血圧です。「下の血圧」とも呼ばれ、血圧の測定値は最小になります。拡張期血圧が基準値より高い場合は末梢血管の動脈硬化のリスク、低い場合は心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患のリスクが高いと診断されます。

血圧の分類と数値の見方
収縮期血圧と拡張期血圧の数値の見方をご紹介します。世界保健機関/国際高血圧学会(WHO/ISH、1999年)では高血圧の重症度を以下のように分類しています。

<血圧の分類と数値の見方>

分類 収縮期血圧
(mmHg)
拡張期血圧
(mmHg)
重症度
最適な <120 <80 最も理想的な血圧
普通 <130 <85 健康な血圧
正常高値 130-139 85-89 生活習慣の改善が必要
グレード1の高血圧(軽度) 140-159 90-99 生活習慣の改善や薬物治療が必要
グレード2の高血圧(中等度) 160-179 100-109 早急な治療が必要
グレード3の高血圧(重度) ≧180 ≧110 直ちに治療が必要
孤立性収縮期高血圧 ≧140 <90

参考:1999年 世界保健機関±国際学会高血圧管理ガイドライン
1999-Nen sekai hoken kikan ± kokusai gakkai kōketsuatsu kanri gaidorain kōketsuatsu gaidorain bunka-kai

日本の医療現場では、120-129かつ<80は「正常高値血圧」、130-139かつ80-89は「高値血圧」として生活改善を指導される場合があります。上記の血圧基準より低い数値であっても個人が持つリスクによっては危険があるということです。数値に油断せず注意していきましょう。

3.平均血圧・脈圧・脈拍の数値の見方

平均血圧、脈圧、脈拍の数値は血管や循環器の健康状態を表します。血圧と同じように正常値と要注意の数値を把握しておくと病気の早期発見につながります。数値に不安がある場合はかかりつけ医に相談しましょう。

平均血圧の数値の見方
正常値:平均血圧90mmHg未満程度
要注意:平均血圧90mmHg以上※抹消血管の動脈硬化の可能性あり

脈圧の数値の見方
正常値:脈圧40~60mmHg以下程度
要注意:脈圧70mmHg以上※循環器系疾患の可能性あり

脈拍の数値の見方
正常値:1分間に約60〜100回(成人・安静時の場合)
要注意:1分間に約60回以下(徐脈)または1分間に約100回以上(頻脈)
※不整脈や甲状腺機能亢進症の可能性あり

4.血圧管理は毎日の計測が大切

血圧は測定する時間帯や環境、ストレスや興奮など少しの影響でも変化するものです。

血圧値の基準は家庭血圧と診察室血圧で分けられることがありますが、いつもと違う環境の診察室では正常な結果が出ないことも多いため、血圧管理では家庭での測定が推奨されています。

自宅で毎日測定して記録し、自分の平均値を把握することが重要です。朝と夜の1日2回、同じ時間、同じ姿勢でリラックスした状態で測ります。食事する前、排泄後というのもポイントです。

最近では、計測データをスマホアプリへ転送してくれる機能がついた家庭用血圧計などもあるので、ぜひ活用しましょう。

5.まとめ

血圧値と一緒によく見かける平均血圧・脈圧・脈拍は、血管や循環器の状態を示すもので、その数値は病気の早期発見に役立ちます。収縮期血圧と拡張期血圧が記される理由も同様です。

それぞれの数値は、動脈硬化、不整脈、心筋梗塞や脳卒中など命に関る病気の診断を助けます。自分で計測結果の見方を知っておくと、早い段階で診察を受けられるでしょう。

また、血圧は時間帯やストレスなどで変化してしまうため、正確な数値を把握するには、毎日自宅で血圧を測って記録することが大切です。家庭用血圧計を用意して毎日2回以上測定する習慣を身につけましょう。

【参考】

1999年 世界保健機関±国際学会高血圧管理ガイドライン
1999-Nen sekai hoken kikan ± kokusai gakkai kōketsuatsu kanri gaidorain kōketsuatsu gaidorain bunka-kai

「血圧について」(医療法人めぐみ会)
https://www.megumikai.com/colum_riha/colum_riha15.pdf

「血圧の上と下の違いと脈圧について」(乾小児科内科医院)
https://www.inui-iin.com/blog/040.html

「脈拍」(東京大学保険・健康推進本部保健センター)
https://www.hc.u-tokyo.ac.jp/checkupresult/explanation/pr/

「動脈硬化の検査」(水岡医院)
https://www.mizuoka-clinic.com/dr-blog/2017/06/21/%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB/

「血圧の正しい測り方と家庭で測るときの注意点」(シチズン)
https://www.citizen-systems.co.jp/health/column/article/article_15.html

教えてくれたのは・・・
錦 惠那 先生
【保有資格】
内科専門医、産業医
【プロフィール】
関西圏の医学部卒業。現在は内科医として市中病院で診療を行っている。
腎臓病、透析医療を専門分野とし、産業医としても活動している。病気の予防は治療と同等に重要であり、予防医学の理解を深めてもらうため、病気やヘルスケア情報の発信にも取り組んでいる。
私生活では1児の母でもあり、日々育児にも奮闘している。
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